ブログ of ぷよまる

人生をサボり続けてきた冴えないおっさんが、40歳を超えて色々なものに挑戦。その体験記と雑記(こっちがメインかも)

ボツ日記:第十話 ~本当に役に立たないただの日記~

f:id:dai5-law:20190707180728p:plain「成敗!!!」

 

ぐわ~!や~ら~れた~!

 

「悪は滅びゆく定め・・・ 天よ、我が殺生を許したまえ」

 

あぁ!お侍様!助かりましたわ!
せ・・せめてお名前だけでも。

 

「フッ!名乗るほどの者じゃぁございません。」

 

 

あぁ、なんて素敵な人なのかしら
助けてくださったのに、名も名乗らないなんて・・・ ポッ

 

これぞ男だ!!!!

 

そう思っていた20代の前半。

 

そんなとき、父上が自慢気にこんなことを言っていたのを聞いたのです。
(方言Ver)

父上「今日、溝にはまっている車を助けてやったんだて」

母上「そうやん?お礼に何か貰ったんかい?」

父上「いや、名乗るほどの者じゃないって言って帰ってきたこって」

母上「ジュースくらい貰えばいやんに。もったいねぇ」


・・・父上!!!

 

漢の中の漢とは、まさに父上のこと!!


私は、こんな父上の背中を見ながら育ったのに、初対面の人間に「ぷよまるです」なんて軽々しく名を名乗るチャラい男になってしまっていました!

 

恥ずかしい!自分が恥ずかしいです!

 

ついでに母上!

そのセコさが我が家の家計を支えていたのですねッ!

大学に入るまで、2年も浪人させてくれてありがとう!

 

と、父上の男前っぷりに肩を震わし、いつか俺もこんなセリフを口にしてみたいと心を熱くしていたのだった。


某月某日

 

深夜、俺は新潟の田舎道で車を走らせていた。

 

軽快にカーブを曲がって、かなり長い直線道路が見えた瞬間、遥か向こうに道路の真ん中をフラフラ歩く人影が見えたのね。

 

田舎街の道路だから、こんな時間に人が歩いているのは珍しいわけよ。

 

うわ!オバケ?

 

とか思ったけど、よ~く見たら人影は千鳥足。

 

俺の2.0の視力は、その人影を酔っ払いとして捉えたのでした。

 

フラフラした人影は一向に道の端に寄る気配はなく、道のど真ん中を歩き続けるばかり。

 

あぶねぇなぁ・・・

 

そう思った瞬間、遥か彼方の対向車線から車のライトが見えた。

 

あ~

あれ?

ちょっと、その人影見えてる???

おい!

 

あぶねぇって!!!!

 

目の前で、その酔っ払いが宙を舞う瞬間を目撃してしまいました。

 

そう、人身事故です。

 

人間って、車にひかれるとあんなに飛ぶんだ・・・ってビックリしちまいました。

 

その酔っ払いの人影をひいてしまった対向車は、一瞬逃げそうな感じだったので、俺は車線を塞ぐように車を停めました。

 

ひき逃げなんて許さんぞ!!!

 

勢い良く車を降りてみたら、道路の真ん中には頭から大量の血を流したオジサンが倒れていたんです。

 

うわ・・・亡くなってるな・・・

 

ピクリとも動かないオジサンを見て、しばらく茫然と立ちすくむ俺。

 

 

・・・

 

 

・・・いやいやいや、ボーっとしてる場合じゃねぇ!

 

警察と、一応は救急車を呼ばねぇといかん!

 

慌てて携帯を取り出したものの、当時はまだ田舎地方には携帯電波が届いておらず、液晶表示は【バリ圏外】

 

再度立ちすくむ俺。

 

茫然自失を絵に描いたように立っていると、酔っ払いをひいてしまった車のドアが開いた。

 

おぉ!忘れておった。

 

なんだか俺が事故を起こしちまったような気がしていたけど、俺は第一目撃者だったんだ。

 

酔っ払いをひいていしまった車から降りてきたのは、まだ免許を取り立てっぽい若い女の人だった。

 

もう、可愛そうなくらい震えてんのよ。

 

そりゃ、人をはねちゃったんだから動揺するだろうし恐くなるわな。


しかも、ひかれたオジサンはピクリとも動・・・か・・な・・

 

 

うわぁ!!!

 


オジサン、立ち上がったよ!


さっきまで、全く動いてなかったのに立ち上がってるよ!
しかも笑ってるし。


ちょっと!頭から血が流れ放題じゃん!

 

俺も、その娘も慌てまくり。

 

そんななかで一番落ち着いているのは、頭から血をダラダラ垂れ流したひかれたオジサンというおかしな状況になっていた。

 

もう、目の前で起こっている状況が全く理解できん!

 

もしかしたら物陰から【ドッキリ大成功!】とかいう看板を持ったリポーターが出てくるんじゃないかと思ったくらい。

 

そんなふざけたリポーターがでてきたら、ドッキリ大失敗と看板を書き直した挙げ句にカメラを奪い取り、新たに【ぷよまるの田んぼで稲刈り!】とかいうヒネリのない番組を夜中に収録してやろうと思ったが・・・

 

ドッキリのリポーターらしき人影は見当たらず。

 

ホントに状況がわからんが、ひとまずオジサンが生きていたのでホッとした。

 

しかし、ベッタリと血の付いた笑顔を見せるオジサンに、ひいた娘は震えるばかり。

 

まぁまぁ・・・2人とも座ってよ・・・

と2人を座らせて、近くの販売機でお茶を2本買ってきて渡しました。

 

オジサンが生きていたからには、警察より救急車が先だな。

携帯が繋がればすぐに呼べるんだけど・・・

 

って、だからオジサン!立ち上がるなっての!!!

 

元気に立ち上がるオジサンを慌てて座らそうと近寄ったら、とにかく酒くせぇんだ!

 

そうとう酔っ払っているらしく、痛みもあんまり感じて無い様子。

 

そればかりか、「兄ちゃん!だいぶ飲んでるねぇ?俺は大丈夫だから早く逃げなよ!」みたいな事を繰り返し俺に言ってくるんだ。

 

どうやら、そのオジサンの中では【飲酒運転をした俺が、オジサンをひいてしまって慌てている。しかし、ひかれた自分は大丈夫だから警察が来る前に逃げろ!俺の漢気を受けて逃げるんだァ!】というストーリーが出来上がってしまっているらしい。

 

いくら説明しても聞いてくれんので、オジサンを勝手に喋らせたまま再度携帯を取り出した。

 

 

【圏外】

 

 

携帯は使えず。

 

こんな田んぼの真ん中に公衆電話もあるはずもなく。

 

近くに民家も・・・

ん?遥か向こうにポツンと見えるな。

 

よし、走っていくか!

 

助けを求めに行くことを2人に告げ、とにかくオジサンを立たせるなと娘さんに念を押して俺は田んぼの脇道を走り抜けた。

 

民家に着くと、電気は全て消えている。

 

しかし、ここで諦めたらいかん!

 

ピンポンを鳴らしまくって、扉をガンガン叩いていると、中から眠そうな住人の方々が出てきてくれました。

 

事の成り行きを話し、救急車と警察を呼んでもらって俺は現場に戻ったのね。

 

そしたらまぁ・・・

うわ~!オジサン、若い娘と2人っきりになってご機嫌になってるよ!

 

道路に大量の血を流したのに、なんて元気な人なんだ

 

俺が戻ると、またオジサンの「まだいたのか!早く逃げなさい!」の説得が始まった。

 

だからアンタをひいたのは俺じゃねぇって・・・

 

しばらくして、救急車が登場。

 

救急隊員の方がオジサンを救急車に乗せたので、「こんなに血が出ていても大丈夫なんですか?」と聞いてみた。

 

隊員さん曰く、「今回はむしろ血が出ていたので良かった」とのこと。

 

なんでも、頭を強く打った時は血が出てしまった方がイイ場合が多いんだって。
反対に、強く打って内出血している方が危険性が高いのだそうな。

 

このオジサンは、なんかうまいこと致命傷を逃れることができたらしくて、まず死亡することはないだろうってさ。

 

ただ、「酒が切れたら痛みは感じるでしょうけどね!」ということだった。

 

救急隊員の明るい口調を聞いて、やっとホッとした俺と娘さん。

 

程なく、今度は警察が来て事情聴衆が始まりました。

 

警察官は、まず救急車の中にいる被害者のオジサンに話を聞いて、俺と娘さん2人のところに向かって、俺に向かって大声でこう言ったんだ。

 

 

キミ!酒を飲んでいるのかね?

 

 

オイッ!!!

飲んでねぇし、ひいてねぇよ!

俺じゃねぇっつうの!!!

 
くそ~!人を助けたのに、この仕打ちはどうしたもんだ!

と思ったけど、娘さんがすぐに「私がひいたんです」と素直に言ってくれたので、なんとか疑いが晴れそうになった。


しかし、警察官は「娘さん、貴方はこの男はかばってるんじゃないか?」とか言い出して、話はこじれる一方

 

も~

 

頭にきた。

 

てめぇ!この警官野郎!
ここに2台車が停まってんのが見えねぇのか!

よく見ろや!
俺の車には傷1つ付いてねぇだろ!

オラ!車検証見ろや!俺の名前が書いてあるんだから、俺の車に間違いねぇだろ!

方や、こっちの娘さんの車はだな・・・

 
という内容の話を、やんわりとした口調で警察官に聞かせ、ようやく納得させることができたのでした。

 

疑うのも仕事なのは知ってるけどさ、こういう態度の悪い警察官キライ。

  

1時間くらい話を聞かれて、ようやく俺は帰っていいよ!ってことになったのよ。


それにしても、最後までその警察官は俺に疑いを向けているっぽくて・・・本当に態度が悪い奴だったわ。

 

はいはい、言われなくても帰りますよ・・・

 

と、車のドアを開けた時、俺は人生初の大チャンスを迎えたのだ!

 

娘さんが駆け寄ってきて、つぶらな瞳で俺を見つめながら
「ありがとうございました!あの・・お名前を聞かせてください」って。

 

きた!

 

チャンス!!!

 

ここで、「名乗るほどの者じゃぁございません」と呟いて、車で立ち去れば完璧だ!

まさか、こんな夜中にチャンスが訪れるとはな

 


お名前を・・・・

 

 

俺は、長年思い描いていた、あのセリフを呟こうとした。

 

 


「なぎょっふ・・・・」

 

 


噛んだよ。

 


この男、ここ1番で緊張して噛みやがったよ!

 


娘さんが、え?なぎょふさん?ロシア人?
みたいな顔をしていたので、俺は慌てて「いやいや、お礼なんていいっすよ・・・ホント」 と逃げるようにその場を去ってきたのでした。


情けない。

 

翌朝、その話を両親にしたところ、お前はまだ人として甘いからそんな晴れ舞台でコケるんだ!

というように、ボロクソに言われました。

人助けしたのに・・・

 

しかし、父上母上の言うことも一理ある。

これからは、更に時代劇を見て漢というものを勉強せねばならんな。

 

お!桃太郎侍やってるよ!


高橋英樹主演の桃太郎侍ね。

 

おぉ!悪人が出てきたよ~!

数十人を相手にする桃太郎侍、カッコイイね~


悪人の皆さん、「切り捨てぇい!」なんて言ってるけど、斬られるのはアンタ達の役目よ。


この正義の味方、桃太郎侍の決め台詞を聞いて斬られるがいい!

 

 

桃太郎侍「1つ、人世の生き血をすすり・・・」


うんうん!


桃太郎侍「2つ、ふらちな悪行三昧・・・・」


そうそう!


桃太郎侍「3つ、醜いこの世の鬼を・・・・」

くぅ~!たまらんぜ!

 

桃太郎侍「退治てくれよう!桃太郎~!」


キャー!桃太郎侍様~ステキ~!


・・・って、名乗ってんじゃん。

 

よく考えたら、水戸黄門も暴れん坊将軍も最終的にはみんな名乗ってんな。

新の漢への道とは、難しいものよのぅ・・・